2021.1.15 | プロジェクトホームページを公開しました |
2021.1.20 | 講演会開催のお知らせ 参加申し込み受付開始 |
2021.2.02 | 【2月】コラム更新 |
2021.3.14 | 白川先生オンライン講演会開催いたしました |
2021.3.14 | トラウマインフォームドケア関連書籍の情報を追記いたしました |
2021.3.18 | 【3月】コラム更新 |
2021.4.30 | 白川美也子先生 ”あいさつ”を追加いたしました |
2021.2.02 | 【2月】コラム更新 |
代表理事 田上幸治
(神奈川県立こども医療センター
患者家族支援部長 医師)
トラウマインフォームドケアのすすめ
虐待やネグレクトを負った子どもが入院してくると、時には攻撃的で、反抗的で、いたずらをしてナースを困らせる場合があります。また、子どもの親御さんも時にはモンスター化する親もいます。それってトラウマかも?どんなきっかけに反応したか?過去にどんな経験があったのか?
辛い体験を癒し、希望に繋げるために、支援者はそんなトラウマの視点を持つ必要があります。
白川 美也子 医師
(こころとからだ光の花クリニック 院長)
「つなっぐ」のトラウマインフォームドケアプロジェクトを応援します
神奈川子ども支援センター「つなっぐ」は子どもの権利擁護センターchild advocacy center:CACです。
本来大切に愛されて育つはずの子どもが虐待や逆境で苦しんでいるときに、子どもの立場から必要な支援を集約するCAC。1985年に米国で初めて設立されてから、今や全米に900ものCACがあります。「つなっぐ」は日本では二番目にできたCACです。
そんな「つなっぐ」が始めるトラウマインフォームドケアプロジェクト。
この世界をよりよいものにするために大切なプロジェクトだと思います。
近年子ども時代のトラウマがその後のその人のこころとからだの健康や人生そのものに大きな影響を及ぼすことがわかってきました。「過去」の出来事による「トラウマ」は「今ここ」に影響します。トラウマを受けた人だけではなく、家族や関係者、そして支援者との関係、ひいては組織までが揺り動かされるのです。とても見えにくいメカニズムです。
傷ついた子どもや家族によりよい対応をするためには、トラウマが引き起こすこのような事象を、トラウマとの関連において理解し、関わっていくことが役に立ちます。それがトラウマインフォームドケア:トラウマを念頭においたケアなのです。
そうしたケアが徹底していけば、人との関係も、組織も、社会構造すら変わっていくでしょう。そういう社会では、加害者となる人も減り、CACが対象とする重度の虐待や性的虐待によって傷つく子どもや家族が少なくなり、社会はより軽やかになり、希望に満ちるでしょう。
目の前で起きていることの背景をトラウマという観点で知ろうとする視点は、私たちの社会をより健全なものに変えていくのです。
小さなことから始めましょう。あなたが関わっている今、目の前にある関係を大切に理解し(Realize)、認識し(Recognize)、対応していく(Respond)ことが、再トラウマ化がない(Resist re-traumatization)、より希望に満ちた未来を開きます。
そんな素敵な扉を開くトラウマインフォームドケアプロジェクトを応援しています!
〜子どものトラウマに気づき、私たちが回復のためにできること〜
トラウマインフォームドケア
白川美也子先生
■日 時:
2021年3月14日(日)
13:30〜15:30(13:00開場)
【第1部】講演会
こころとからだ光の花クリニック
院長 白川美也子 医師
【第2部】パネルディスカッション
▶︎パネリスト
白川美也子
(こころとからだ光の花クリニック 院長)
島田恭子
(社会福祉法人真生会 常務理事)
田上幸治
(神奈川県立こども医療センター 医師)
(つなっぐ代表理事)
▶︎コーディネーター
飛田 桂
(ベイアヴェニュー法律事務所 弁護士)
(つなっぐ代表理事)
■場 所:オンライン(zoom)
後日、ミーティングURL等を
メールにて連絡いたします。
■参加費:無料
■定 員:100名
「最も大切なものは子ども達が良くなること」
日本には根本的にこの視点が不足している。日本でどれくらいの数の司法面接がされているか?どれくらいの数のTF-CBTが行われているか?その数は増えてきているとはいえ米国の現状とは雲泥の差だ。日本にはこのCACのような子どもに優しい環境が足りない。そして、被害にあった子ども達が良くなることを明確な目標にしていない。
ラグビー日本代表はワールドカップで大活躍した。世界でベスト8になる目標を掲げ、そのための厳しい努力を続けてきた。ベスト8はその成果だ。ビジョンを持って、プランを立て、コツコツ努力すれば不可能なことは何一つない、歓喜の中でそんなことを教えられた。
癇癪を起こし暴れる幼児。喧嘩ばかり、嘘をついてばかりの小学生。自傷や過量服薬、性的逸脱を繰り返し大人の話には無反応の中学生。高校もバイトも続かず気怠い様子のハイティーン。叱っても、反省を促しても、罰や厳しい制限を課しても、ひたすら受容的に接しても、うまくいかない・・・園や学校、施設などで子どもと日常的に接している方は、このような子どもの対応に悩み、疲れ、無力感を感じ、諦めの境地に達したこともあるでしょうか。
「問題行動」と捉えられがちな子どもの言動の背景には、トラウマがあるかもしれません。特に性的虐待を受けている子どもの多くはSOSを出せずにいます。子ども虐待やDV目撃、いじめなどの反復性のトラウマ体験は発達の過程にある子どもの脳と体の発達に大きく影響し、感情コントロール、対人関係の構築の困難や様々な身体症状が現れ、自分を肯定的に捉えることが難しくなります。逆境的小児期体験(ACEs)は、成人後もうつ病、依存症などの精神疾患、生活習慣病やがんに至るまであらゆる心身のリスクを高め、寿命にまで影響するという驚くべき研究結果も明らかにされています。
トラウマ・インフォームド・ケア(TIC)を知り、トラウマのめがねをかけて子どもを見ることができるようになると、これまでとはまったく異なる風景が見えてきます。理解に苦しみ悩まされてきた子どもの言動にはトリガーがあり、その言動がトラウマの再演であり、周囲の誤った対応で悪循環に陥っていたことがわかるのです。そして回避策や対応策が見え、再トラウマ化を防ぐことができます。子どもも大人も、状況をコントロールしやすくなり自信がつき、双方に余裕が生まれます。TICの実践は、個々を尊重する安全な社会の実現につながるのです。